「うつ病対策」が職場のメンタルヘルスを向上させる 日本の対策は最下位

 心の不調について職場の上司に相談できると、そうでない場合に比べ、生産性が高まることが、日本を含む15ヵ国の1万6,000人を対象とした研究で明らかになった。

 うつ病のある労働者が管理職からサポートを得られないと、欠勤日数が増える傾向があるという。職場で従業員のうつ病に対応している比率は、日本は最下位の16%だった。

話すのは良いこと!
うつ病からの開放が職場の生産性を上げる

 日本を含む15ヵ国の1万6,018人を対象とした横断調査で、「うつ病の労働者が仕事を休む頻度を減らすために、上司の理解と支援が必要」であることが明らかになった。

 うつ病を含む精神疾患は、個人および社会に大きな打撃を与える。働き続けていれば、どこかの時点でうつ病を経験することは珍しいことではない。職場でのメンタルヘルスの不調を経験している労働者は6.8人に1人(14.7%)に上るという。
 研究は、ロンドン スクール オブ エコノミクス(LSE)の個人社会サービス研究ユニットのサラ エヴァン ラツコ氏らによるもので、医学雑誌「BMJ Open」に発表された。

 「雇用者がうつ病について話し合う機会を設けるのを避けていると、労働者は仕事を拒むようになり、仕事を続けている場合でも生産的が低下することが示されました。従業員がメンタルな問題に対処するのを、管理職が積極的に支援することで、職場は変われる可能性があります」と、エヴァン ラツコ氏は言う。

従業員のうつ病に対応している比率 日本は最下位の16%

 研究の対象となったのは、欧州の7ヵ国(デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国、トルコ)、および南米やアジアなどの8ヵ国(ブラジル、カナダ、中国、日本、韓国、メキシコ、南アフリカ、米国)の、計1万6,018人の従業員および管理職。

 15ヵ国中で上司が従業員のうつ病に対応していた比率が高かった上位3ヵ国は、(1)メキシコ(67.3%)、(2)南アフリカ(56.3%)、(3)スペイン(56.0%)。逆にもっとも低かった国は(15)日本(16.0%)、(14)韓国(28.7%)、ドイツ(39.0%)。日本は最下位だった。

 上司が従業員のうつ病に対応するのを避けた比率が高かった上位3ヵ国は、(1)韓国(30.2%)、(2)中国(27.0%)、(3)イタリア(13.0%)。日本は5位の9.0%だった。

 うつ病の発症に休暇のとり方も大きく関わっている。世界的に教育水準の高い人ほど休暇をとりやすく、企業の規模は小さい方が休暇をとりやすい傾向がみられた。

うつ病について知ることが負のコストを減らす

 「うつ病は目では見えない病気です。うつ病を発症した人は、ある時点までそれを隠す傾向があります。職場で従業員がうつ病について公然と話せない雰囲気があると、その傾向は強まります。業績が落ち込んでもその理由が分からない場合には、背後にうつ病が隠れているおそれがあります」と、エヴァン ラツコ氏は言う。

 これまでの研究では、うつ病を含む精神疾患を抱える労働者の約70%がそのことを隠していることが判明している。うつ病に対して恐れやスティグマ(負の烙印)を感じ、仕事を失ったり、続けるのが難しくなるのを恐れているからだと考えられる。
 「管理職は良い職場を維持するために、従業員の病状の変化を早期に認識し、サポートを提供し、良い職場を作るようトレーニングを受けるべきです。そのことが結果として、従業員を助け、職場の負のコストを減らすことにつながります」と、エヴァン ラツコ氏は指摘している。

It’s good to talk! Openness about depression in workplace increases productivity(ロンドン スクール オブ エコノミクス 2018年7月24日)
Is manager support related to workplace productivity for people with depression: a secondary analysis of a cross-sectional survey from 15 countries(BMJ open 2018年7月26日)