腎臓病対策 CKD重症化予防の徹底など明記 厚労省が報告書

 厚生労働省は「腎疾患対策検討会報告書」を発表した。慢性腎臓病(CKD)や糖尿病腎症などに対策するさまざまな取組みがスタートする。「年間の新規透析導入患者数は、現在3万9,000人。それを2028年までに3万5,000人以下に減少させる」という目標を掲げている。

腎症対策で新規透析導入を年間3.5万人以下に減少

 「腎疾患対策検討会報告書–腎疾患対策の更なる推進を目指して―」は、厚生労働省の「腎疾患対策検討会」(座長:柏原直樹・川崎医科大副学長)が策定した報告書。2016年末で、年間の新規透析導入患者数は3万9,344人、透析患者総数は32万9,609人。この10年ほどで大きく増加していないが、減少にまではいたっていない。

 報告書では、「透析患者数そのものの減少」という大目標を掲げ、達成するために「2028年までに、年間新規透析導入患者数を3万5,000人以下に減少させる」という数値目標を打ち出した。

 国際腎臓学会(ISN)によると、「慢性腎臓病」(CKD)の世界の成人の有病率は、男性で10.4%、女性で11.8%だ。CKDの症例の約3分の2が糖尿病、肥満および高血圧などに起因している。CKDは心血管疾患の危険性も高め、心血管疾患は糖尿病患者の主な死亡原因となっている。

成果目標(KPI)を設けて慢性腎臓病(CKD)に対策

 目標を達成するために、▼慢性腎臓病(CKD)対策の重要性を国民全体に普及啓発する、▼地域のかかりつけ医療機関と腎臓専門医療機関との連携を強化する、▼腎臓療養指導士を育成し、かかりつけ医と連携した指導を行う体制をつくる、▼腎臓学会など関係学会で診療ガイドラインを作成し、効果的・効率的な治療を推進する――といった施策を行うことを提言している。

 達成すべき成果目標(KPI)は大きく以下の3点だ。

(a) 地方公共団体は、他の行政機関、企業、学校、家庭などの多くの関係者からの参画を得て、腎疾患の原因となる生活習慣病対策や、糖尿病性腎症重症化予防プログラムの活用なども含め、地域の実情に応じて、報告書にもとづく腎疾患対策に取り組む。

(b) かかりつけ医、メディカルスタッフ、腎臓専門医療機関などが連携して、CKD患者が早期に適切な診療を受けられるよう、地域におけるCKD診療体制を充実させる。

(c) 2028年までに、年間新規透析導入患者数を3万5,000人以下に減少させる。新規透析導入患者数を2016年比で、5年で5%以上減少、10年で10%以上減少させる。

糖尿病や高血圧と連携した活動も効果的

 国や自治体、腎臓学会や糖尿病学会などの関連学会は、成果目標(KPI)および評価指標を設けて、進捗の管理をするべきだとしている。その状況は、ホームページなどで公開されるのが望ましい。

 数値目標の実現に向けた施策として、(1)普及啓発、(2)地域における医療提供体制の整備、(3)診療水準の向上、(4)人材育成、(5)研究開発の推進――という5本の柱を打ち立てている。

 (1)では、CKDは生命を脅かし、患者数も多い疾患であること、治療可能であること、早期発見・治療が重要であること――といった知識を、医師、メディカルスタッフ、行政機関、CKD患者、国民全体、高齢者、小児など、対象に応じた普及させる

 このため、学会には「普及啓発を含めた地域の腎疾患対策の中心的役割を担う担当者を、都道府県ごとに決定し、担当者を中心として自治体と連携して普及啓発等を行う」ことを要請している。なお、糖尿病や高血圧、心血管疾患など、他の疾病と連携した普及活動も効果的・効率的と考えられている。

「かかりつけ医」と「専門医療機関」との連携を重視
ガイドラインも合同で作成

 (2)の医療提供体制では、「かかりつけ医」と「腎臓専門医療機関」との連携体制を各地域で構築し、強化していくことを求めている。

 CKD患者数は、成人の約8人に1人にあたる約1,300万人と多いので、腎臓専門医療機関のみで診療を行うことは難しい。具体的には、腎臓学会や糖尿病学会など関連学会や関係団体が、国や自治体と連携して、「かかりつけ医から腎臓専門医・腎臓専門医療機関への紹介基準」、「かかりつけ医から糖尿病専門医・専門医療機関への紹介基準」を広く普及する。紹介率・逆紹介率などを指標に進捗状況を把握し、改善を促す。

 (3)の診療水準の向上では、効果的・効率的なCKD治療を行うために、腎臓学会や糖尿病学会に対して、▼推奨内容を合致させたガイドラインなどを合同で作成する、▼患者、メディカルスタッフ、かかりつけ医など、対象を明確にしたガイドラインなどを作成し、普及に努める、▼糖尿病などの関連疾患の専門医療機関との連携基準を作成し、普及に努める――といった対策を求めている。

看護師・保健師、管理栄養士、薬剤師の活躍も重視

 (4)の人材育成では、「腎臓病専門医の不足」「CKD診療を担うメディカルスタッフの数が不足と偏在」「CKD診療を担うメディカルスタッフと、CKD関連疾患の診療を担うメディカルスタッフとの連携が不十分」という課題があることを指摘している。

 そこで、▼「腎臓病療養指導士」など、CKDへの基本的な知識を有する看護師・保健師、管理栄養士、薬剤師などの医療スタッフを育成する、▼かかりつけ医と腎臓病療養指導士との連携、腎臓病療養指導士と関連する糖尿病療養指導士などとの連携を推進する――といった対策を進める。

 看護師や薬剤師、管理栄養士、理学療法士など医療スタッフの活躍の場が今後10年で広がれば、CKD診療に携わる医療従事者数が増え、CKD診療体制が充実すると考えられる。

 さらに(5)では、関連学会、関係団体、国、地方公共団体、企業などが密接に連携し、▼研究および診療へのICTやビッグデータの活用、▼国際共同試験を含めた臨床試験の基盤整備、▼病態解明に基づく効果的な新規治療薬の開発、▼再生・オミックス(ゲノムなど)研究――を推進する。

 腎臓学会、糖尿病学会の連携のみならず、循環器学会などの心血管疾患の関連学会との連携も重要で、データベース間の連携構築により、オールジャパン体制で研究を促進する。

全国の好事例を共有 熊本市の取り組みが成果

 多くの行政機関では、CKD対策の実践にはさまざまな担当部署の関与が必要で、腎臓学会や糖尿病学会などが指名する地域の担当者などの医療従事者との連携の窓口として、地方公共団体においてCKD対策担当者が明確になること望ましい。

 報告書では、全国の好事例を共有することの必要性も指摘。医師会などの関連団体、腎臓学会や糖尿病学会などの関連学会と連携して、効果的・効率的な啓発活動を横展開する取組みも求めている。

 熊本市がCKD対策事業を開始した2009年には新規透析導入者数は295人だったが、2016年は243人で52人減少(7年間で18%の減少)。透析導入の平均年齢も66.74歳から69.15歳に低下した。

 CKD病診連携医と腎臓専門医との病診連携をスムーズに行い、CKD推進会議メンバーの取り組みや団体同士の協働の取り組みを活発化したことが、成果につながった。

 病診連携紹介件数(かかりつけ医からの報告)は右肩上がりに増え、2017年には累計が1,637件になった。「熊本市CKD」というキーワードで検索すると、市内で病診連診している連携医の名簿や専門医の名簿、紹介状様式などがダウンロードできるページが表示される。

 先行している「糖尿病性腎症対策」をCKD対策と連動させることも重要だ。診療現場では、糖尿病とCKDについて、共通の医療従事者が関与しているケースが少なくない。すでに構築されているネットワークが活用できる可能性がある。

腎疾患対策検討会報告書~腎疾患対策の更なる推進を目指して~(厚生労働省 2018年7月12日)
腎疾患対策検討会(厚生労働省)
熊本市の健康課題CKD(慢性腎臓病)