収入や教育年数が「健康格差」に影響 年収低いほど肥満リスクは上昇

 世帯収入や教育年数が低いほど肥満リスクが高い傾向があり、年収が少ないほど炭水化物の摂取量が多いことが、日本人を対象とした調査で明らかになった。日本でも社会格差から派生する「健康格差」を是正する施策が求められている。

世帯年収が少ないと肥満が増加

 調査は、滋賀医科大学アジア疫学研究センターの三浦克之センター長が研究代表者をつとめる厚生労働行政推進調査事業費補助金「NIPPON DATA研究」の一環として行われた。

 対象となったのは、厚生労働省の2010年国民生活基礎調査と国民健康・栄養調査に参加した全国の20歳以上の男女2,891人。就業状況、婚姻状況、教育歴、世帯支出などの社会的要因と、体格・栄養摂取・喫煙などの生活習慣などの関連を分析した。

 その結果、社会的要因と体格についての分析では、65歳未満の女性では、世帯収入や教育年数が低いほど肥満リスクが高いことが明らかになった。

 栄養摂取についての分析では、男女ともに世帯年収が少ないほど炭水化物の摂取量が多いことが明らかなった。口腔衛生については、世帯支出や教育年数が低いほど残存歯数が少ないことが明らかになった。

 社会的要因と体格の関連については、65歳未満の女性では、世帯年収600万円未満の群は、世帯年収600万円以上の群と比べると、肥満(BMIが25以上で30未満)のリスクが高いことが明らかになった。肥満のリスクは、世帯年収200~600万円未満では1.70倍に増加(95%信頼区間1.04~2.7)、200万円未満では2.09倍に増加した(同1.07~4.09)。

 また、教育年数9年以下の肥満リスクは、教育年数10年以上に比べ、1.67倍高いことも明らかになった(同1.07~2.49)。

世帯年収が少ないほど炭水化物が多い

 三大栄養素のひとつである炭水化物の摂取と社会的要因の関連を分析したところ、男女ともに、世帯年収が少ないほど炭水化物の摂取量(エネルギー比率)が多いことが明らかなった。

 炭水化物のエネルギー比率は、男性では世帯年収600万円以上で58.6%、200~600万円未満で59.5%、200万円未満で61.1%、女性では世帯年収600万円以上で56.8%、200~600万円未満で58.3%、200万円未満で59.7%だった。

 口腔衛生に関する分析では、平均支出を四分位に分けて比較したところ、平均支出の下位25%のグループは、上位25%のグループに比べて、残存歯数が少ないリスクが1.91倍高いことが明らかになった(同1.43~2.56)。また、教育年数9年以下群の残存歯数が少ないリスクは、教育年数13年以上群の1.84倍だった(同1.36~2.49)。

社会背景をふまえた保健指導が必要

 このように、栄養摂取・健康に関する知識や行動などが社会的要因と関連することが明らかになった。「保健指導を行う時は個人の経済状況などの社会背景をふまえて行うと効果的である可能性がある」と、三浦センター長は述べている。

 「健康格差の縮小は、健康日本21(第二次)の重点課題でもある。NIPPON DATA2010研究から得た社会的要因に関する知見が活用され、健康格差の是正への対策が積極的に講じられることが望まれる」と強調している。

 生活習慣などの循環器疾患の危険因子と社会的要因との関連を明らかにした論文12編は、日本疫学会誌「Journal of Epidemiology」特集号「日本人の循環器疾患危険因子と社会的要因の関連」に発表された。

滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門
滋賀医科大学アジア疫学研究センター
Cardiovascular risk factors and socioeconomic status in Japan: NIPPON DATA2010(Journal of Epidemiology 2018年3月)